ここに在る幸せ



ふとした時、アッシュの視線を感じる。
それはエルドラントから奇跡的に生還し、再び二人でこのファブレの家に戻ってきてから、幾度と無く感じた視線。
―――大丈夫か、と。
その眼差しに込められた
音(こえ)が確かに伝わってくる。
―――大丈夫だから、と。
相手に向かって微笑むと、強張っていたアッシュの表情が幾分か和らいでいった。
いまだぎこちなく笑うアッシュ。
けれども以前に比べて良く笑うようになったアッシュの変化を、ルークは嬉しいと感じる。
そして愛しい、とも。



ヴァンとの最終決戦後、大爆発を起こして
オリジナル(アッシュ)に取り込まれる筈だったレプリカ(ルーク)は、ローレライの助けによってかろうじてその存在をこの世界に繋ぎ止めた。だが解放されたばかりのローレライは万全の状態ではなく、一年の歳月を費やしてアッシュを蘇生させた。
けれどもルークをも蘇生させる余裕はその時には無く、更に一年の時を経た後にルークはオールドラントへの復帰を果たした。
だがやはり、アッシュとは異なりその身体を構成するのは第七音素のみであって。
万が一にも音素の乖離が起こってしまえばルークは跡形もなく消えてしまう。

だからアッシュが不安になる気持ちは解る。
アッシュをこの腕に抱いてローレライの放つ光に包まれた時に一度は諦めた命だった。だが、今確かにここに存在する命を、もう手放したいとは思わない。
アッシュと共にこの世界で生きていたいと切に思う。





世界の為に死ぬ事を望まれていた。
世界を救う対価として差し出さなければならない命なのだと思っていた。
―――世界の理に背いて生まれた存在だから。



どうして、と思った事もあった。
どうして自分ばかり、と。
だから、この世界を恨んだ事もあった。



けれども、それはもう過去の事。

還るべき家があって。
出迎えてくれる父や母、執事やメイドが居て。
支えてくれる仲間が居て。
何より、いつも隣にアッシュが居る。



無為に生きていたあの頃には解り得なかった幸せがここに在る。
だからこの先、精一杯生きていこう。
この世界で、皆と一緒に。




 
ED後捏造的アシュルクです。
二人が戻ってくるまでの詳しい設定はオフの方でかいていけたらと思ってます。
このシリーズは甘くてほのぼのになるといいなぁ(あくまで願望)
2007.09.17